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「私は御門と申します」
スーツ姿の女性はそう名乗って名刺を突き出した。
桐島は素直にそれを受け取る。
手のひらサイズの白い紙に、黒い細々とした印字で
『心霊探偵事務所 御門』
とだけ、寂しげに表記されている。
「御門さん、ですか」
「はい。
よろしくお願いしますね」
彼女、御門は目を細めてにっこりと微笑んだ。
「ところで、桐島さん。
貴方は女性の霊に取り憑かれていると、そうおっしゃっていましたね」
彼女、御門はテーブルに広げた黒い手帳に目を落とした。
「先日、電話でお話しされたことをもう少し詳しく、できるだけ具体的に説明して頂けますか」
御門の隣に座る少女は肘をついて、退屈そうに窓の外を眺めている。
少女が飲み干したコップの氷が溶けて、カラン、と澄んだ音がした。
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