悪夢

3/11
前へ
/54ページ
次へ
「私は御門と申します」 スーツ姿の女性はそう名乗って名刺を突き出した。 桐島は素直にそれを受け取る。 手のひらサイズの白い紙に、黒い細々とした印字で 『心霊探偵事務所 御門』 とだけ、寂しげに表記されている。 「御門さん、ですか」 「はい。 よろしくお願いしますね」 彼女、御門は目を細めてにっこりと微笑んだ。 「ところで、桐島さん。 貴方は女性の霊に取り憑かれていると、そうおっしゃっていましたね」 彼女、御門はテーブルに広げた黒い手帳に目を落とした。 「先日、電話でお話しされたことをもう少し詳しく、できるだけ具体的に説明して頂けますか」 御門の隣に座る少女は肘をついて、退屈そうに窓の外を眺めている。 少女が飲み干したコップの氷が溶けて、カラン、と澄んだ音がした。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加