悪夢

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結局、桐島が家を出たのは太陽が最も高い位置にある時間だった。 本当は朝のうちに出発したかったが、いつもカーテンを締め切っているから標準時間が分からなかった。 体内時計を信用したら、すでに昼を過ぎていた。 携帯の時計を確認すれば良かったのではないか、と気付いたのは桐島が駅の柱に下がった大きなデジタル時計を発見した時だった。 その時計の下にある券売機でいくつか先の駅までの券を購入した。 その券をジーンズのポケットに閉まってホームへと急いだ。 ホームには大量の人が電車を待っていた。 平日の昼間だというのに、今日は人が多い。 桐島は小さく溜め息をついた。 そろそろ電車が到着する筈だった。 最後列にいたのでは電車に乗れないかもしれないと思ったので、無理やり最前列付近に割り込んだ。 横の中年男が迷惑そうに咳払いをした。 思わず謝罪したが人の雑踏でその声はかき消されてしまった。 暫くして人間を一杯に飲み込んだ鉄の塊が軋む音を立てて目の前に止まった。 桐島はホームの行列と共に、身体を人の詰まった車中に押し込んだ。 電車の中はとても混雑しており、人の発する熱気と雑音が桐島の不快感を煽った。
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