悪夢

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――意識が覚醒した桐島は、見慣れた一軒家の前に立ち呆けていた。 どうやってここまで来たのか全くの記憶がなかった。 斜めに指した日差しが家の壁や道路を橙色に染めているから、もう何時間もたっているに違いないことは分かった。 しかし駅からこの一軒家まで歩いても1時間程度である。 ここまで無意識的に歩いてきたとしても、そこには数時間の空白があった。 どこかに座り込んでいたのだろうか。 それとも、ふらふらと彷徨い歩いていたのかもしれなかった。 しかしどちらにしても空白の時間帯に何をしていたのか、もはや桐島には分かるはずは無かった。 そして知る必要も、なかった。 それは桐島がこの家を訪ねることが何よりも重要だったからだった。
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