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ミズキはよくできた子だなぁ、と感嘆交えて欠伸をもうひとつ。
――思い返すと、加奈子とミズキが一緒に住み始めてから半年になる。
最近は同棲にも幾分慣れて、2人の間には暗黙の役割が振り分けられていた。
例えばミズキには家事全般を任せている。
今朝のように毎食の支度、新聞受けから新聞を出して貰う、などのことは毎日のことだ。
2人分の家事をそつなくこなすミズキは絶対に主婦にむいていると、加奈子はいつも思う。
ここで注意すべきは、別に加奈子が家事を苦手としている訳ではないということだ。
これは、断じて違うのである。
また、加奈子にも役割はある。
単にミズキの手作りおやつを片手に、ソファーに横になってテレビを見ているだけではないのだ。
例えば、この間借りしたアパートの家賃や、生活費全般は加奈子が支払っている。
それにミズキには僅かながらお給料を出しているのだからきっと問題はないはずだ、と自分に言い聞かせている。
ところで、その資金は加奈子の家業である『心霊探偵事務所』の売り上げからきているものだ。
加奈子にはネーミングセンスが皆無であるために、このような名前になってしまったのである。
新興宗教を思わせる胡散臭い名前のためか、収入はあまり芳しくない。
ミズキには事務所の手伝いとして帳簿をつけさせているのだが、資金繰りはとても苦労しているようだ。
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