30人が本棚に入れています
本棚に追加
仕方がないのでメモ帳に書いてある番号に電話をかけてみる。
無機質なコール音が1回、2回、3回。
このまま出ないなら6回目のコール音が終わった瞬間に切ってやろうかと考えてみる。
しかし、ちょうど6回目の途中、間延びした男性の「もしもし」が受話器から聞こえてきて、危うく舌打ちしかける。
もちろん顧客にそんな失礼なことはできないので、加奈子はそれを飲み込んだ。
ミズキが鬼の形相で加奈子を睨みつけているから、ではない。
それは断じて違うのである。
「こちらはご相談を承った心霊探偵事務所の者です」
「ぁ……、わざわざすみません」
まだ若い男性の声。加奈子とそう年は離れていないように感じた。
「いえいえ。
ところで本日はどういったご用件でしょう」
「は、はい。
その、実は、霊に取り憑かれてるみたいなんです。多分。
僕の思い違いかもしれないけれど……」
最初のコメントを投稿しよう!