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初めて喫茶店というところに足を踏み入れたが、どこの店もこのような雰囲気なのだろうか。
どことなく落ち着くピアノの旋律が店内に充満している。
時折聞こえる食器の擦れる音と客同士の会話すら店内の音楽の一部となって、雑音には違いないが耳障りということは全くなく、むしろ心を休ませてくれるようである。
今現在の特異な状況にもこの喫茶店特有の雰囲気が影響しているようで、本来他人と話すのが苦手な筈の桐島は自身でも驚くほど冷静だった。
「さて、本題に入りましょうか」
桐島は机の上に乗った珈琲から目を上げる。
向かいには2人組の女性――、まだ若い桐島くらいの年齢の女性と、まだ高校生かそれを下回るくらいの幼い顔をした少女が座っている。
口を開いたのは年齢の近いであろう女性のほうである。
スーツを着たその女性は整った顔をしており、いつも口角の上がった表情を浮かべているために非常に柔らかな印象を与えている。
対して隣に座った少女の方はとても可愛らしい顔立ちではあるものの、色白で赤みはなく、不機嫌そうに口を詰むんでおり、取っ付きにくい印象がある。
特にこの少女が何者なのかというのは全く予測ができないため得体はしれないが、とにかく探偵事務所の関係者ではあるのだろう。
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