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元々無口な光樹くんは、自分からたくさん話をする事は無かったけれど、教室に着くまでの間、一方的に話す私の何でもない話を黙って聞いていた。
彼とこんなに話をしたのは初めてかも知れない。
でも、くだらない事ばかりで、つまらなかったかな?
教室までの道のりはあっという間で、何だか楽しかった。
「あ、もうすぐ教室に着くね。手伝ってくれて、どうもありがとう。すごく助かっちゃった」
「どういたしまして」
少し照れたように、光樹くんはぼそりと呟いた。
教室の前に着くと、中から誰かの話し声が聞こえてきた。
まだ、誰か残ってるんだ。
男の子が、2・3人くらいかな?
それにしても、何だか聞き覚えのある声がする。
手がふさがっている光樹くんの代わりに、教室の扉を開けようとした時、中にいる生徒達の会話がはっきりと聞こえてきた。
「お前の彼女、樫宮 瑠奈だっけ?あの子とあれからどうよ?」
(えっ、…私?)
自分の名前が出てきて、思わず扉を開けようとした手が止まった。
「あ~、あいつね~…」
(あ、この声…トオルだ)
「あいつ、すげー固いんだよね。全然ヤラしてくんねーんだ。もう、別れっかな~」
頭を思いっきり叩かれたような衝撃を受けて、急に目の前が真っ白になった気がした。
(い、今…何て…)
トオルは、私が聞いている事も知らずに、 どんどん話を続けていく。
「ちょっと待てよ!賭けの話はどうなるんだよ、トオル!お前があいつとヤレたら俺ら、儲かるのに。お前だって自信満々だったじゃねーか」
「もう、飽きたよ。頑張って優しくしてきたのに、1ヶ月付き合ってキスしかさしてくんねーし。次の子探した方が早いって」
「うわっ、お前最低~」
「ぎゃはは…」
品の無い笑いが教室にこだまする。
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