67人が本棚に入れています
本棚に追加
授業終了のチャイムが鳴ると、皆一斉に帰り支度や部活の準備を始める。
前の席の美沙都が、カバンに教科書を入れながら私に声をかけてきた。
「ねぇ、最近多田野くんと仲がイイよね?」
「えっ!?…うん、まぁ、そうかな?」
「いつから?」
…いつからだっけ…?
「う~ん…、いつからだろう。いつの間にか?」
「ふぅ~ん…。じゃあ、いつから、『瑠奈』って呼び捨てにするようになったの?」
「え?」
そういえば、前は"樫宮"って名字で呼ばれていた気がするけど…。
いつからだろう。あまりにも自然で気付かなかった。
「本当だね。そういえば、いつから、私のことを名前で呼ぶようになったんだろう。光樹くん…」
「えっ?気づいてなかったの?」
「うん…」
「っていうか、瑠奈って基本的に鈍いよね」
「え~!そうかなぁ?」
「うん。っていうか、じゃあ2人は付き合ってるわけじゃないんだ」
「え!?付き合ってないよ!!」
一気に体温が上がる。
体中の体温が、顔に集中しているような気がした。
「…じゃあ、瑠奈の片思い?」
「え!!なんで知っ…」
「分かりやすいね(笑)」
美沙都は、「引っかかった」と言わんばかりに、にやりと笑みをこぼす。
「あ~!カマかけられた~!」
っていうか、光樹くんに聞かれてたら困るんだけど…
慌てて、あたりを見回す。
「多田野くんなら、さっき出て行ったよ。で、いつからなの!?」
美沙都がわくわくした顔で聞いてきた。
ほんと、この手の話好きだよね。
でも、美沙都は口が固いし、信用できる。
「…あの、『笑え!』っていう手紙…光樹くんがくれたものだったの…」
「そうなんだ~!でも、なんで知ってたんだろうね。瑠奈が別れたって」
「えっと…。トオルの話を聞いた時、光樹くんがたまたま横にいて…」
「あっ、じゃあ、あの時言ってた『慰めてくれた人』って、多田野くん?」
「うん」
耳まで真っ赤だ…。きっと今私はすごい顔をしているんだろう。
「まぁ、よかったじゃん。多田野くんなら安心だね。アイツ何考えてるか分からないっていう子もいるけど、きっといい奴だよ。…って、私も仲いいわけじゃないけど」
「ううん、美沙都の人を見る目は確かだもの。光樹くんはとってもいい人だよ」
「頑張れ!瑠奈!」
そういうと、ニカッと笑って美沙都は帰って行った。
最初のコメントを投稿しよう!