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彼女がぺこりと頭を下げて、走って校舎に戻って行った。
後ろ姿を見送って、姿が見えなくなると、ため息がこぼれる。
ふーっ、なんとか諦めてくれたか…。
俺も帰ろう。
瑠奈はもう帰っただろうか?
もしまだ教室に残っていたら、一緒に帰るように誘ってみようかな…。
カバンを取りに教室に戻ろうと足を進めると、木の陰から亜麻色の長い髪の毛が見えた。
あれは…
近づいていくと、後姿だけで誰かはっきりと分かった。
「…瑠奈?」
もしかして、今の聞かれてたか…?
声をかけると彼女がゆっくりと振り向いた。
…けど、その目からは大粒の涙が零れ落ちている。
「瑠奈?どうしたの?…なんで泣いているんだ?」
瑠奈は、俺に言われて初めて泣いていることに気づいたらしい。
「え?」と、自分の頬を触って驚いた顔をしている。
なんで泣いているんだ。
涙を拭おうと手を差し出したが、瑠奈はひらりと身をひるがえして俺の手から逃れた。
そして、うつむくようにしながら話し始める。
「あの…、聞くつもりはなかったんだけど、光樹くんの事を探していて…偶然見つけて…声かけづらくって…あの、ご、ごめんなさい!」
「探してたって…、どうした?何か用があったのか?」
俺は、瑠奈に近づこうと歩みを進めたが、何も言わず、瑠奈は走って行ってしまった。
「あっ、瑠奈!?」
俺が呼んでも、彼女は振り向くことは無かった。
瑠奈が、俺を避けるように逃げて行ってしまったのが軽くショックだった。
それにしても…今の現場を見ていたから泣いているのか?
それは…、期待してもいいってことなのかな…
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