愛しい人

4/15
前へ
/64ページ
次へ
「…あの時、光樹くんのことが好きだと気付いたの。でも、あんなところ見られて、あんな奴と付き合ってたなんて、とんでもない子だと思われてたらどうしようとか、トオルと別れてからまだ2カ月もたっていないのに軽いやつだと思われたらどうしようとか…後ろ向きなことしか頭に浮かんでこない…」 「……(って、それってどう見ても多田野くんも瑠奈の事が好きなんじゃないの!?)」 「…美沙都?」 「とにかく、わかったわ。…本っ当にトオルの奴!とんでもない奴ね!もう二度と瑠奈には近づかせないから、安心して!」 美沙都…。 笑顔が何だか怖い…。 「とりあえず、今日はもう寝な?そんなに泣いたんだから疲れたでしょ?お風呂は明日の朝入っていけばいいよ。あ、その前にご飯食べる?」 「ううん、もう疲れちゃったから、お言葉に甘えて寝る。美沙都、ありがとう。聞いてもらったらスッキリした」 「うん、じゃあ、おやすみ。瑠奈」 「おやすみ」 『…あっ、瑠奈。服…』 そう言った美沙都の声が聞こえた気がしたが、私は、すぐに深い眠りに落ちてしまった。 制服を着替えさせる暇もなく、瑠奈はすぐに寝息を立てて眠りに就いた。 制服着たままだし、布団にも入ってないし。 …正直あんなに泣いている瑠奈は初めてで戸惑った。 というか、泣いている瑠奈自体初めて見た。 困惑したのは確かだけど、ここは親友としてなんとかしてあげないとね。 どうしようかな… あっ、いいこと思いついた! 美沙都は携帯を取り出して、電話帳を開いた。 「たしか、以前委員会の仕事で使うからと、多田野光樹の電話番号とアドレスと聞いたはず…」 程なくして、目的のそれを見つけると、迷わず彼に電話した。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加