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メールで届いた住所と、携帯のマップコンテンツを頼りに櫻井の家を探した。
「ここか…」
女の子の家に来るのは初めてだ。
少し躊躇しながら、家のチャイムを鳴らすと、程なくして櫻井が顔を出した。
「あ、いらっしゃい。早く上がって」
そんな簡単に…
「…おじゃまします」
そのまま櫻井の部屋へ通される。
部屋に入ると、ベットに寄りかかったまま寝ている瑠奈がいた。
相当泣いたんだろう。
目の周りが赤くなっている。
「瑠奈…」
胸が、キューッと締め付けられて、苦しくなった。
櫻井が、まるで自分の事のように、せつなそうな顔になる。
「話すだけ話して、泣くだけ泣いたらこの子寝ちゃったのよ。私ひとりじゃ着替えさせることも出来ないし、この子の家にはウチに泊らせるって言ってあるから、…連れて行ってくれない?」
…連れていくって………?
「…どこに?」
「どこって…、あんたの家」
「えっ!何でだよ!?」
突然の申し出に、驚いて大きな声を出してしまった。
「うるさいわね!瑠奈が起きるでしょ!?」
「あっ」
慌てて二人とも自分の口を手でふさいだ。
良かった、起きる様子はない。
櫻井の提案で、とりあえず、瑠奈を起こさないようにそっと部屋を出てリビングに場所を移した。
リビングのソファに誘導されると、櫻井は冷蔵庫から麦茶を出してくれた。
そして、先ほどの続きから話を始める。
「瑠奈はね、あんたと離れるのが怖いの。告白された時に『好きな子がいる』って言って断ったんでしょ?それを聞いてた瑠奈は、それが自分以外の誰かだと思ってる」
「それは…瑠奈が俺のことを……」
…好きってことか…?
自分で言っていて頬がゆるむ。
「あ、そんな顔もするんだ!本当に瑠奈のことになると表情が変わるのね!」
櫻井は驚いたように指をさして、そして楽しそうに笑った。
俺は必死に平静を装うが、遅かった。
照れ隠しで悪態をつく。
「うるさいな…」
「バカね。私からそんなこと言えるわけないでしょ?聞きたかったら本人に聞きなさいよ」
…ごもっとも…
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