愛しい人

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光樹くんが扉を閉めると、瑠奈は部屋を一周見まわした。 何というか、余計なものがほとんどないスッキリした部屋だ。 ベッドと勉強机と本棚。 それからクローゼットとローテーブル。 あれ? ベッドの上に、女性物の洋服が置いてある…。 「これ…」 その時、光樹くんがトレイにコーヒーを2つ乗せて帰ってきた。 私が、洋服に手を置いているのを見つけると、丁度良かったというように、説明をしてくれる。 「ああ、それ、後で風呂上がりにでも着ろよ。昨日の夜にねぇちゃんが帰ってきてさ、その時に借りたんだ。まぁ、すぐに出て行っちゃったけど」 「あ、そうなんだ。何から何まで…ごめんなさい」 目の前のローテーブルに、コーヒーのカップを置いて、ミルクと砂糖を並べた。 「あの、美沙都の部屋からどうやってここまで連れてきたの?」 「おぶって来たんだよ」 「ええ!?お、重かったんじゃ…」 「いや、思ったより軽かったよ。瑠奈は小さいしね」 「何だか、はずかしいな…」 少し沈黙が続く。 どうしよう、何を話したらいいんだろう。 また、泣いているところを見られちゃってるし、あんな場面のぞき見したみたいになっているし… 何より、今、この家には私たちしかいないみたいだ。 何だか緊張する。 沈黙を破って、話を切り出したのは、光樹くんだった。
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