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その時、瑠奈の様子を黙って見ていた光樹が、教室の扉を勢いよくあけた。
「うわっ」
中で話していた男の子たちが、ビクリと体を震わせる。
「何だ、多田野かよ…。びっくりさせんな」
入ってきた人を見止めて、トオルがホッとしたように言い放った。
その声に反応して、光樹はちらりとトオルをみたが、すぐに目をそらした。
「なんだ、聞かれちゃまずい話でもしていたのか?」
その質問に、トオルが慌てて毒づく。
「うるせーよ。お前には関係ーねーだろ」
「あ、そう……」
そう言うと、持っていた教材をドサリと教壇の上に置いた。
そのまま教室を出て行こうと、踵を返し扉に手をかけたところで、トオルが呼び止める。
「おい、ちょっと待て。多田野、俺たちの話、誰にも言うんじゃねえぞ」
「…」
何も答えない光樹に、少し気まずそうにトオルは話を続けた。
「聞こえてなかったんなら別にいいけどよ…」
「…には…いねえよ」
「は?」
振り向いた光樹の目は、トオルを冷徹に睨みつける
そして、低い声で冷たく言い放った。
「お前ら…、女見る目ねぇのな?樫宮 瑠奈はお前らにはもったいねぇよ」
その言葉に、トオルが勢いよく立ちあがった。椅子がその勢いに耐えきれず、真後ろに倒れた。
「何だと!?瑠奈はもう俺の女だよ!」
教室の空気が張りつめる。
光樹はフッと口元をゆるめて意地悪そうに笑う。
そして、教室の扉をゆっくりと開けた。
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