最悪な一日

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「樫宮がお前の女…?そうなのか?…樫宮?」 すると、その呼びかけに答えるように、うつむいたままの瑠奈が教室に入ってきた。 「る、瑠奈?いつからそこに…っていうか、もしかして俺たちの話、聞いて…?」 「おい、ヤベーんじゃねぇの?」 トオルたちの表情がひきつっているのが分かる。 一緒にいた友達の顔も青ざめていた。 「…らない…。知らないわ。私、あんたなんかの彼女じゃないし!あんた達、最低ね!」 叫んでいる訳では無かったが、声は怒りで震えているように聞こえた。 いつも笑顔のイメージしかない瑠奈には珍しく、今まで見たことのない、怒りを露わにした表情をしている。 その場にいた男の子たちは、驚いて身動きが取れなかった。 トオルも、すっかり血の気が引いて、青い顔をしている。 沈黙が続く中、その静寂を破ったのは、光樹の良く通る声だった。 「…って言ってるけど?」 そう言うと光樹は、相変わらず口角をあげ、その顔に笑みをたたえている。 ざまぁ見ろとでも言いたげだ。 「あ…、る、瑠奈…」 声を発しかけたトオルを、瑠奈はギュッと睨みつければ、その気迫に押されて、トオルは声を呑みこんだ。 その時、瑠奈はその瞳に悲しそうな色を少しだけ見せると、一言だけ告げた。 「サヨナラ」 そういうと、教室を出て走って行ってしまった。 慌てた光樹は、瑠奈と自分のカバンを持つと、瑠奈の後を追っていく。 教室に取り残されたトオルたちは、ただ茫然と二人の後ろ姿を見送っているしか出来なかった。
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