たいせつな冷たい温度

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初めて会った時、全身に冷たさが滲み出ていた。余計なモノは近寄らせない何かが感じられた。 隼斗が由宇に会ったのは、友人の紹介だった。友人の名前は花宮佐紀。高校の同級生で、何故かとても気が合って大学が異なっても度々会っていた。 ある日、佐紀に借りていた本を返すという佐紀の申し出から、彼女の大學へ行った。約束した「大学の南にある三番目のベンチ」という細かい指定場所へ行くと、茶髪でショートカットな佐紀ではなく、黒くとても長い髪をした女の子が座っていた。それが由宇だった。佐紀とは全く違った雰囲気を纏っていた彼女と目が合ったとき、全てが泊まった気がした。全てを彼女に持っていかれたのだ。黒くて綺麗な瞳に。 「椎名隼斗さんですか?」 彼女が尋ねて来たのでそうだと答えると、隼人が貸していた本を大きなリュックから出して、渡して来た。 「花宮佐紀から預かって来ました。レポートが間に合わないみたいで代わりに渡して欲しいって。」 「あ、あぁそうなんだ、ありがとう。」
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