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差し出された物を取ろうとした時、彼女の手に触れてしまった。向こうはさっと手を引いてしまった。嫌だったのかもと少し落ち込んだが、別の事が脳内を支配していた。
冷たい。
人間の手はここまで冷たくなるのかという位冷たかった。氷、雪のようだった。そして気が付いた。彼女の纏っている空気が冷たい事。先程から目を全く合わせてくれない事。初対面だからと言われればそれだけの事で済んでしまうが、彼女のそれは明らかな拒否反応を示していた。男性が苦手なのかとも思ったが。
「な、んかごめんな。わざわざ。」
「大丈夫です。」
緊張してうまく喋れない。至って普通の女の子で、とても可愛いとか美人だとかそういった子ではない。でも隼斗はこの子から目が離せなかった。ずっと見ていたいと思った。
「じゃあ私はこれで失礼します。」
ぺこっと頭を下げて立ち去ってしまった。
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