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「怖かったよね? 不安だったよね? ……ううん、そうだった筈。でも安心して、私は葵を見捨てない。だって私達――」
深く息を吐いたお姉ちゃんは俺の顔を、目をしっかり見つめながらこう呟いた。
「――姉弟じゃない」
「ね?」と俺に微笑みかけてくれたお姉ちゃん。一時止まっていた涙が、再びその量を増やしてこみ上げてきた。
今は――泣かせてくれ。
ー ー ー ー ー ー
「一ヶ月前から、ねぇ」
「……うん」
あれから一時間ぐらい経ち、泣き止んだ俺はお姉ちゃんに今までの経緯を話した。とは言っても、俺自体分からない事だらけだ。
いつから変化したか、その後はどうだったか、ぐらいだな。
「しかし、不思議なものね。男の子が女の子になっちゃうなんて」
「だよね……はぁ、俺本当に男だったのかな?」
「何言ってんの、男として過ごしてきた16年間は事実でしょ? 葵が疑っちゃ、男の葵に呆れられちゃうぞっ」
「……うん、そうだね」
しかしお姉ちゃん、さっきっから妙に子供扱いしてない? 頭撫でられる回数が半端ねぇし。
「そう言えばさっきから気になってたんだけど、葵縮んでない?」
「は? 何言っ――」
しかし、お姉ちゃんの顔を見上げる角度が確かに急になった気がする。俺達は今、並んでベッドに座っている。今までなら大して見上げる必要はなかったんだが……。
あ、因みにお姉ちゃんは女にしては背がかなり高い方で、なんと身長百八十五㎝ある。対して俺は百六十七㎝……だった。小さい時から背の高いお姉ちゃんを見て育った為、いつかは俺もと思ってたんだが、現実は非情である。
な、何だか嫌な予感がするであります。
俺は慌てて机の中からメジャーを取りだし、それをお姉ちゃんに渡す。
「い、今すぐ測ってくれ! 嫌な予感がするんだ!」
「え? あぁ、はいはい」
最悪だ……この服のダボダボ感からして確実に身長縮んでるぞ、これは。しかし何㎝だ!? 何㎝に――
「百五十㎝」
「なん……だと……?」
「いや、百五十㎝だって。鏡見てみる?」
全身が映る鏡が前に置かれ、初めて全身を拝む事になった。俺は女顔だった為、顔の見た目に大した変化はない。が、胸は膨らみ、腰は括れ、尻は……控え目か。そして、股間にそびえ立つイチ――いや、最早何も言うまい(現実逃避)
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