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焦点が定まらない目をメジャーに向けると、俺の脳天は百五十㎝のメモリまでしかなかった。ご丁寧にお姉ちゃんの人差し指がその数字を指している。
「ハハッ、十七㎝も縮んでるや。これは夢? ……うん、痛い」
何と言う理不尽!
俺は最早身長で勝る事も、暴力――はもう良いっつーの! 嗚呼、こんな見た目じゃ、良くて中学生、悪くて小学生にしか見えねぇじゃん!
わなわなと体を震わせ、涙目になった表情のままお姉ちゃんを見上げた。
ブッ、と言う音と共にお姉ちゃんの鼻から鮮血が噴き出した。
「ご、ごめん、破壊力凄まじいっ!」
鼻を押さえ後ろを向くお姉ちゃんを、俺は血だらけになった顔を拭いながら見るしかなかった。
誰か助けて下さい。と、俺は願うしかなかった……
ー ー ー ー ー ー
「つまり、葵は元から女の子だった訳ね?」
「だーかーらー、俺は男だったっつーの! 生みの親が記憶改竄すんなし!」
「だって、私には理解出来ないんだもの」
「俺だって理解出来てねぇよ!」
あー、全然埒が明かん。
身長を測った後、お姉ちゃんの提案でお母さんにも話しとくべきだと言う結論に至り、こうして説明してるんだが……。一応、俺が葵だって事は分かってもらえたんだが、今度は以前の性別の事で揉めている状態。
どう考えても男だろjk。……今は女だが。
「ん~、明美はどう思うの?」
「いやいや、どうも何も男だって言っ――お姉ちゃん?」
「ちょっと黙ってて。今役所に出す書類書いてるところだから」
「おいィ!?」
「あら、準備が早いじゃない」
いや、いやいや! 何? 何の書類!? ちょ、何が「まぁね」だよ!
「あ、年齢は何歳にする? 私は十四歳ぐらいが良いなー」
「いや待て! 何歳にする? じゃねぇよ! 普通に十六で良いから!」
「えー」
「黙らっしゃい!」
「ぶーぶー」
お前は幼稚園児かっ!
口を尖らせ渋々書類に“十六歳”と書くお姉ちゃん。あのままだったら、確実に見た目通りの年齢にされてたぜ……
「……後悔しないね?」
「は? 何が?」
「んーん、何でもないわ。んじゃ、書類役所に持ってくね」
「あ、あぁ」
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