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「さて。……一か八か、試してみるか」
悠介はそう呟き、紙パックを捻る。
「けほっ。何を試すの?」
「ちょっと、な。……“上手くいけば”逃げれる」
う、上手くいけばって。
「……それ、大丈夫なの?」
悠介の言い方に不安を覚えたアタシ。
故に、不安を顔に浮かべ、そう問い掛けた。
「分からん」
「え、えぇ!?」
まさかの分からない発言に、アタシは驚愕を顔に浮かべる。
更に、喉を痛めているにも関わらず、大声を出してしまった。
故に、物凄く痛い。のど飴だけではやはり駄目らしい。
「いや、試した事ないからな」
「だ、だからってぶっつけ本番で試す!?」
「状況が状況だしな。贅沢は言ってられんし」
「ア、アハハ……もう、駄目かもしれない……」
アタシは悠介の左腕に腕を回したまま、頭を抱える。
どう考えても、失敗する未来しか想像出来ない。
仮に成功する確率があるとしても、それは数%程度だろう。
「ふぇぇ……ほ、他の案を探――」
「……いや、そんな事してらんないみたいだぞ?」
「ふぇ? ……わ、わぁ」
再び、動き始めた人体模型達。
確かに悠介の言う通り、悩んでいる暇はなさそうだ。
今すぐにでも、悠介の博打当然のプランを実行するようだろう。
成功すれば万々歳。失敗すれば、オレサマ オマエ マルカジリ。
「や、やるなら早くしてよぉ!」
「っ! わ、分かったから飛び跳ねるなっ!」
「あ、あわわわわっ」
もう、人体模型達との距離は一mもない。
アタシは悠介を早く早くと急かす。
悠介は急かされつつも、捻った紙パックを冷静に教室のドア付近に投げた。
ちょ、えぇ!? な、何してんの!?
「成功してくれよ! ――」
「――……あ、あれ? 人体模型達は?」
視界が暗転したと思いきや、前方には誰も居なかった。
状況が理解出来なかったアタシは、小首を傾げる。
せ、成功したの、かな?
「……す、凄いじゃない! これ、成功でしょ? ねぇ悠――……す、け? えっ?」
「悠介? ど、何処に居るの? ……ゆ、悠介ぇ!」
な、何で? ――
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