約束と時間を操る老兵

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「全く、とりあえずそれは親父に報告だな」  ため息交じりにシャルガはそういうと、こいつはという感じの視線を僕へと向けた。その目線を僕ではなく、父さんに向けてほしいなどと考えながらも僕はただ苦笑いを返すことしかできない。 「ケイト、情報屋『千里眼』へいきましょう。あまり遅くなり、閉まっているなんてことがないように」 「あ、そうだね」  アリスの提案に僕は頷いた。するとシャルガが思い出したように口を開いた。 「そうそう、情報屋『千里眼』の店構えなんだけど、真っ黒なテントだからすぐわかると思うぞ。場所は――」  シャルガから、情報屋『千里眼』の店構えや場所を詳しく教えてもらい僕達は別れたのだった。 「ケイト、お前はなにをしようとしてるんだ?」  僕の後姿を見ながらシャルガが小さくそんなことを呟いたことなど知ることなんてなかった。  再び馬車に揺られマクセル領へと戻り、情報屋『千里眼』の元に辿り着いた頃には、日が傾き始めもう少ししたら夕方という頃であった。シャルガから聞いてはいたけれど、本当に真っ黒なテントで少しばかり驚いた。 「いこうか」 「はい」  僕はアリスに入ることを促しながら、テントの幕をくぐった。中は意外と涼しく、テントの黒い布地から漏れる光が中を怪しく駆り立てていた。椅子2つに机が1個。対面に座れるようになっており、そこに僕達の反対側に座っていたのは少女というには幼い5歳くらいの女の子。緑色のくりっとした目に、柔らかく少しウェーブのかかった緑色の髪。そんな彼女は僕達2人に笑顔でこう口にした。 「待っておりました、ケイト・マクセル様、アリス・フォルアード様。私の王子様に会わせくれるんでしょ?」 「何故そのことを?」  名前を知っていることや、僕がここにやってきた目的さえも知っている彼女を怪しみながら、そう口にすると彼女は面白そうにコロコロと笑う。 「私は魔法は使えないけれど、風が様々な情報を教えてくれるの。今日は良い天気だってことから、誰と誰が喧嘩したとか、これからこうなるんじゃないか?とか本当に色々なことをね」 「それで、僕達のことも風が教えてくれたと?」 「うん!あなた方が、今日の朝精霊と取り交わした約束とかも教えてくれたよ。私みたいな魔力のない人を探してるんでしょ?」  その言葉に僕は驚き目が自然と大きく開いた。 
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