約束と時間を操る老兵

11/15
42093人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
「でだ、正直な所ケイトは、なんの情報が欲しいんだ?」  シャルガがふと僕に対してそんなことを聞いてきた。内心ついにこの質問がきたかと思った。さて、なんて答えるべきなのだろうか。精霊さん達の契約者を探す約束をしているんですとかだろうか?しかし、ガルトスが国王様に対してどのような説明をしているかにより、すぐに嘘がばれるだろう。 「簡単な話です。私とケイトの新婚旅行先はどこがいいのかを聞くだけです」 「新婚旅行先を情報屋に?」  僕がどのような言い訳をしようかと考えている中、アリスがシャルガに対して誤魔化しにかかってくれた。しかも、彼女の変化の表情が乏しい中から嘘を 見抜くのはかなり苦労するはずだ。そんな嘘に対してシャルガはすかさず疑問を投げかけてくる。確かに、普通に考えて情報屋に新婚旅行先がどこがいいかなどと聞くのはおかしすぎる。どのようにそこを誤魔化すのだろうかと思えば、今僕達が置かれている日常とは違う状況をアリスは利用した。 「ええ、今戦争前でどこが良いかアドバイスを貰おうかと。場所によっては大変なところもあるでしょう」 「こんな時に新婚旅行ね」 「ええ、最悪の場合私達の最期の思い出になるかもしれませんからね」  シャルガはどこか納得いっていないと様子であったが、こういわれては僕達に対して返す言葉がなかったのだろう。僕ぐらいの年齢ならば、前線にはでないが後方には出陣することは間違いない。それに、相手の強さを考えれば前線など瞬時に突破され後方まで来るだろうことは予想できる。そうなると考えられるのは、考えたくないけれども僕が死ぬということだろう。 「全く、そういうことにしておいてやるさ。ああ、そういうことにね」  シャルガは軽く肩を持ち上げながらそういうと、僕へと視線を向けた。 「しっかりとした奥さんだよな」 「まぁね」 「くそう、なんだか羨ましいな」  シャルガは笑みを浮かべながら僕の胸を軽くグーで小突いた。それに対して、僕は笑みを返したのだった。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!