約束と時間を操る老兵

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 2人からすれば信じられないような話であることは間違いない。僕だって、正直な所料理が彼らの動く理由になるとは信じられないところがある。でも、彼らがマクセル領に人間の料理を求めてやってきているのだから、やはり本当なのだろうか。判断に迷うところではある。 「何故、マクセル領なんだよ」  そんな疑問の声がシャルガから当然の如くあがる。それに対して、一応ガウスさんや父さんから聞いている内容を彼に正直に伝える。 「なんでも、少し前から賢狼のエアリアルがマクセル領にやってきたんだ。それで僕の家の執事長と仲良くなって一緒に行動していて、戦争になるとエアリアルが聞いたもんだから、じゃあ料理を作ってくれるなら守ってあげるよって感じになったみたい。そしたら、賢狼が他の種族達に人間守ったら、人間が料理くれるって話を自慢して、他の同じような強さの種族達も料理が食えるならってこぞって集まり始めたみたい」 「なんだそりゃ」 「ほんとうになんだそりゃだよね」  実際そうやって集まっているのだから、笑うしかない。もしかしたら、父さんが他にも僕達には内緒で何か条件を出している可能性はあるだろうけれど、それがなんなのかも全く予想ができない。彼らほどの強さを持ちながら、人間に何を求めるのかも検討もつかないのだから。 「もしかしなくても、最近マクセル領が大量の食材等を買い込んでるというのは――」 「うん、彼らに料理を提供する為みたいだね」  ジュリアスがなるほどと呟きながら、納得したように頷く。 「じゃあさ、他の領地にもその過剰戦力を分散させることはできないのか?」  と少し考えた後、シャルガが当然の提案を口にした。今過剰ともいえる戦力を分散させれば、戦争での被害は格段に抑えられるだろう。だけれどもだ、僕がもっとも疑問に思っていることがここで思いっきり引っかかってくるんだ。 「彼らだって、きっとわかっているはずなんだ。自分達ほどの存在が1か所に固まるのはおかしいことくらい。それに戦争だってことなら、11年前のように人間全体を助けてくれるように行動するはずなのに、今回はマクセル領だけ。だからなにかあるんじゃないかなって」 「確かに、何もマクセル領だけに拘らなくてもいいはずだもんな」  シャルガも考えるように右手を顎に当てる。本当に彼らの考えが全くわからない。
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