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何も考えていないだけなのか、それとも何か考えがあってなのか。まるでその穴埋めをするように、精霊さん達が今回は人間側に味方をしてくれるかもしれない。そのことを一瞬伝えるべきかと悩んだが、まだガルトスが国王様と話し合っている頃かもしれない。僕の領地で彼ら精霊を受け入れるとなっている以上、現魔王と面識があると分かるのは時間の問題かなとも思う。むしろここで口にしなかった方が、怪しまれるのではないだろうか。
「実はマクセル領で精霊さん達を受け入れることが決まったんだよね」
「精霊を受け入れる?その交渉は今朝行われるとは聞いていたが、お前の家がかかわったのか?」
シャルガが驚いたように目を開き、同じようにジュリアスも驚いた表情を浮かべていた。
「うん、彼らが移住権を欲しがって、彼らを受け入れる先の候補としてマクセル家に声が魔王からかかった感じかな。父さんはさらに、移住権のほかに彼らのパートナーとなる契約者の捜索についても自由にしていいと許可を出しちゃったけど」
「おいおい、それは――」
「うん、こちらが指定したところに集めておく1か所限定の移住権ではなくて、おそらく領地内であれば自由に移住して良いっていう移住権だね」
シャルガはなにかを口にしようとしたけれど、それをグッと飲み込んでいた。おそらく、彼がいいたかったのは『それではいつか、彼らが権力を持つのでは』ということだろう。僕だってそれは考えていた。でも、父さんはそんなことを全く危険視していない。
「父さんは彼らが権力を持つだろうことに関して、全く危険視してないよ。それも怖いくらいにね。むしろ、魔族との交流を開く1つの鍵として考えているような感じだし」
「お、おい!それは色々と大丈夫なのか?」
思わずといわんばかりにジュリアスからそんな心配そうな声があがる。今まさに戦争をしようとしている種族と交流を開くと戦争をする前から口にしているのだから、これまた変な話だ。勿論魔族にも、人間と仲良くしたいと考えている者がいるとしてもだ。
「本当にお前の所わけわからないな」
「そんなことをいわれてもね。父さんにいってよ」
シャルガの悩み事が増えたといわんばかりで言い放った言葉に、僕はそう返すしかなかった。
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