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満月の光が、嘉暮町(カグレチョウ)商店街と書かれた古ぼけた看板と、シャッターにより閉ざされている店の列を照らしていた。
街灯はあるがに灯りはなく、その月光のみが光だが、視界を確保するには十分なほど星の無い夜空に大きく浮いていた。
そんな不気味なほど人気の無い商店街の通りを俺は歩いていた。
「もうこんな時間か。早くかえらないと、明日から高二なのに初日から遅刻はまずいな」
携帯で時間を確認すると十一時を過ぎていた。調子乗って遊びすぎたなあとか、なんで街灯一つ着いてないんだろう、なんて考えながらあることを思い出していた。
『百鬼夜行』
ここ嘉暮町に昔からあって誰もが知ってる言い伝え。年に一回だけ日が沈み街から明かりが消えた時、無数の妖怪が街を歩き回るそうだ。
そしてその年に一回というのは、四月の満月、つまり今日である。
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