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「ひゃあ」
やっと声を出したかと思うと情けない奇声を上げた。
目の前には、鬼や河童などの妖怪達が屋根の上を歩いたり、電線を渡っていたりとそこらじゅうを動き回っていたのだ。
俄には信じられない光景に腰を抜かす。
「有り得ない、嘘だ、夢だ。そうだ夢に決まってる」
すると痩せたおかっぱの子どものような妖怪『垢舐め(アカナメ)』が細くて長い舌を伸ばして俺の頬を舐めた。
生暖かい感触と頬に残る唾液は今ここで起きている事は現実だと認識させるには十分過ぎるほどの刺激だった。
震える足を無理やり動かし建物の間に飛び込んだ。
光から逃げるように細い暗がりを進み続ける。
おぼつかない足取りで路地を歩いていると、ゴミ捨て場の散乱したゴミ袋に引っかかり転んでしまう。
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