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地に伏せこのまま眠ってしまおうかとも思った。寝て朝になれば全てが元に戻ってるだろう。しかし後ろに気配を感じ体を静かに起こした。
大きな絶望を胸に抱き、ゆっくりと振り向く。
そこには灰色の羽織袴をきて一本歯の下駄を履き、黒い体毛に覆われた鋭い爪を持つ三本の指、顔は猛禽類のようで黒い羽根がはえている。『烏天狗』が立っていた。
「ニンゲン……コロス」
小さく呟くようだったが、俺の膝の震えは止まらなかった。
烏天狗は腰に差した太刀を引き抜いた。刃に月の光が反射され美しく輝いた。その青いような紫の刀身は見つめいると命が吸い取られそうな妖艶さを放っている。
「死ぬんだな。俺」
烏天狗がゆっくり近づいてきた。
もう駄目だ、もう終わりだ。まだ十六歳なのにな。人生まだまだこれからなのに。
太刀が振り下ろされた。
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