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突然なんで俺なのかって聞いたらば、こんなことを言うわけだ。
時『私、この前乾さんとの別れ際に、司さん宛に簡易なものですけど、手紙を渡したんです。その日の帰りに司さんに会いに行くというものですから』
俺「それだけで俺に会いたいって?」
時『いいえ。それと一緒に、私のハンカチを渡してもらうように頼んだのよ』
ハンカチ?と思うでしょ?
俺も思ったんで、何でハンカチ渡したん?って聞いたら。
時『私の誕生日に、あなたが刺繍してくださったハンカチをお渡ししたんです』
正確に言えば貸したということになるけども、と時子さん。
そのハンカチなんですけど、俺って昔から我が家では裁縫担当で、ミシン、刺繍は実は得意分野でして、アクセサリー作りも好きやったんで昔から色々作ってたんですね。
ボタン付けも俺担当、お姉さんの浴衣の時の髪飾りも作ったり。
未だにお姉さんも、昔に作った金魚の髪飾りとピアスを使ってくれており、時々手直しするんですが、最近とんとやってない、裁縫担当。
こっちに来て裁縫担当したのは、リン君の欲しがってた割烹着に刺繍と、時子さんがやってくれって言うから、お気に入りのハンカチに、名前と椿の花の刺繍をしたぐらいです。
そのハンカチに、ちゃんと俺からってわかるように、俺の名前も刺繍してほしいと言われたんで、時子さんの名前と、俺の名前の入ったハンカチ。
それを渡したと言うんです。
俺「ハンカチに何かあんの?」
と言えば。
時『いえね、これを渡したのは、ある意味賭けのようなものなんです』
俺「賭け?」
時『えぇ、手持ちで渡せるものがこれしかなかったのもありますけど、これで十分やから、それを渡してと言われたのよ』
俺「誰に?あなご先生に?」
と言えば、これまた驚きですわ。
時『いいえ、お鈴ちゃんにです。彼女がこれを渡すように、私にアプローチしてきたんです』
と言うではないか。
そんなこと全く気付かんかった俺。
なんでそんなことになるのか不思議やと言えば。
時『うふふ…。でもね、若さん。乾さんがそれを司さんに渡した後日、つまりは今日、司さんの方から連絡あったのよ』
”このハンカチに呼ばれてる”とね。
俺は呼んだ覚えないけどと言えば、
時『おそらく”彼女”でしょうねぇ』
と笑って言う。
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