1st 森の中で。

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アキは微笑みながら指を鳴らす。 何処からか何かが割れた音がした。 「言霊無しで解除か。流石だな。」 魔術を使うには言霊が必要だ。 魔力をのせ言葉を謳(うた)い、魔術という形にする。 言霊無しでの魔術発動は、魔力を過大消費するので殆どの魔術師は出来ない。 呆けてる青年の怪我もいつの間にか治っていた。 「さ、行きましょう。…貴方、名前は?」 「俺はヤクモコウヤ。八つの雲が光る夜で八雲光夜だ。」 アキは光夜の手をとり、「行くべき場所を頭に浮かべて。私が連れていくわ。」と微笑む。 「体力と魔力を回復してくれたから平気だぞ?」 光夜は微かに頬を染めながら言う。 「苦労させたお詫び。大したことじゃないから平気よ。」 ギュッと手を握り直し、「さぁ、想像して?」目を閉じて光夜を急かす。 「あ、ああ。……いいぞ。」 光夜も目を閉じ、頷く。 「”彼の望む場所へ運べ。風移(フウイ)“」 一陣の風が吹き、アキと光夜は消えた。  
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