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アキは微笑みながら指を鳴らす。
何処からか何かが割れた音がした。
「言霊無しで解除か。流石だな。」
魔術を使うには言霊が必要だ。
魔力をのせ言葉を謳(うた)い、魔術という形にする。
言霊無しでの魔術発動は、魔力を過大消費するので殆どの魔術師は出来ない。
呆けてる青年の怪我もいつの間にか治っていた。
「さ、行きましょう。…貴方、名前は?」
「俺はヤクモコウヤ。八つの雲が光る夜で八雲光夜だ。」
アキは光夜の手をとり、「行くべき場所を頭に浮かべて。私が連れていくわ。」と微笑む。
「体力と魔力を回復してくれたから平気だぞ?」
光夜は微かに頬を染めながら言う。
「苦労させたお詫び。大したことじゃないから平気よ。」
ギュッと手を握り直し、「さぁ、想像して?」目を閉じて光夜を急かす。
「あ、ああ。……いいぞ。」
光夜も目を閉じ、頷く。
「”彼の望む場所へ運べ。風移(フウイ)“」
一陣の風が吹き、アキと光夜は消えた。
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