一章

9/23
前へ
/74ページ
次へ
急に叫んだ事によりクラスの視線が集中する その視線に居心地が悪くなった零は逃げるように教室を出て行く 「はぁ、しょうがない。屋上にでも行こうかな」 廊下をトボトボと歩いて屋上へと通じる階段を上がった先には蝶番が少し錆びた鉄の扉がある 金属が軋む音を聞きながら扉を開けると遮る物が何一つ無い、一面の青空が広がっていた その景色を見ると沈んでいた気持ちが少し軽くなったような気がして、俺はいつもの場所である貯水タンクの横に寝そべり、肺の中の空気を全て変えるように大きく息を吸った 屋上から空を見上げるのは俺のお気に入りで気持ちが落ち着く唯一の場所なんだ 腕を枕にして流れる雲を呆然と眺めていると足下から声がきこえる 「あ、やっぱりここにいたんだ。探したんだよ?」 顔を上げて足元を見ると、頭だけ出した春がこちらを見て笑っている 「ん?春、どうしたの?」 その言葉にどこかむっとした顔で言葉を返す 「どうしたのって、お昼一緒に食べようとしたのに零ったら急にどこかに行っちゃうんだもん。」 「あぁごめんごめん、だけど春、もうすぐ昼休み終わるよ?」
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加