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 次の日も、私はその光景を目撃した。ちらりと通り過ぎざまに目を向けると、ブロック塀の継ぎ目が縦に割れており、二センチほど隙間をつくっているのが、子供たちの頭の上に見えた。  ははあ、なるほど。とは思ったものの、それだけだった。子供の戯れにはありがちな、幼い好奇心というやつだ。  四日連続でその場面に出くわした。  その夜、どうでもいいと思いつつも、私は帰宅途中に、その割れ目を探していた。  別にのぞきたいと思ったわけではなかった。他人の庭をのぞき見たところで、何が面白いわけでもない。  単に、隙間があいているという事実に触れたいだけだった。  見つかった。しかし頼りない街灯の明かりでは、その向こうに何があるのかまではまったく見えない。それに、まばらではあるが人通りもある。  私はそのまま帰宅した。そのうち修繕されるだろうと思い、そうなれば何もかもすぐに忘れる。  ところが、次の日その場所にさしかかると、今度のぞいていたのは、女子高校生たちだった。  子供ならともかく、分別のわかるはずの高校生が、他人の家の庭をのぞき見るとは……。そう不審に思いながらも、いつものように、その場を通り過ぎた。
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