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琳琳王女が丁国の王宮に着いた時、既に各国からの使節団や招待客で王宮はいつになく賑わっていた。
「成王陛下、この度はおめでとうございます。貴陽国を代表してお慶び申し上げます。」
「うむ、ありがとう。琳琳王女こそもうすぐ大允国皇后になられるとか。こちらからもお慶び申し上げねばなりませんな。いや、実にめでたい、めでたい。」
景王子の父親であり、琳琳王女の母親である孫王妃の兄、つまり王女の伯父でもある成王は、喜びが隠せないのか豪快に笑い出した。やや緊張していた琳琳王女もつられて微笑んだ。
「ところで、景王子の姿が見えませんが、一体どちらへ?」
「ああ、今夜は遅くなるだろう。丁国には、花婿は独身最後の夜を友人達と飲み明かすという風習があってな。私も王妃との結婚前夜に友人達と朝まで飲んで、後で『飲み過ぎだ』と王妃から非難されたものだよ。アハハハハハ…」
(結婚式の前に景王子と話がしたかったけれど、今日は会えそうもないな…)
琳琳王女は、客殿に用意された部屋へは戻らず、しばらく王宮のあちこちを見て回った。すると以前にはなかった新しい宮殿が見えた。近づいて見ると、どうやら最近完成したばかりのようだった。
「すっかり見慣れたこの王宮にも、私の知らない所があったなんて…」
それから景王子とよく遊んだ想い出の「祈りの丘」へ登った。そして、幼い頃のように座り込んでいつまでも沈む夕日と夕焼けの空を眺めていた。
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