第二章 もうひとつの結婚

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「あら、三人なんて少ない方よ。父帝なんて、側室が十人以上いたのよ。母はそれでかなり苦労したみたいだけれど、皇后として後宮を統率するのが自分の使命だと言っていたわ。」 「使命ですか…私に何ができるでしょうか?」 「兄には心から愛してくれる人が必要なの。兄は一見怖そうに見えるけれど、本当はとても優しい人よ。私の結婚の準備もいろいろ気を遣ってくれたのよ。でも兄とは一緒に暮らしたことはないの。皇宮の決まりでは、皇子は生後半年で乳母に預けられ、七歳になれば一人で東宮に住むことになるの。だから年の離れた兄とは会う機会も少なかったけれど、結婚の準備で色々話すうちに、本当は優しい人だということがよくわかったわ。」 「正直言うと、私も怖い人だと思ってました。でも、お手紙を頂いて、誤解していたことがわかりました。今では…尊敬しています。」 「そう、それならよかったわ。兄が直々に手紙を送るなんて、よほど貴方のことが気に入っているのね。」 「その、側室の方々について教えてくれませんか?」 「もちろんいいわよ。その事は兄の口からは言い辛いでしょうし…」 そう言って、明亮皇女は側室について一人ずつ説明し始めた。 まず、一人目の李貴妃は、李大将軍の娘で、性格は温厚で、宮女達からも慕われている。皇后が居なくなってからは、最年長の側室として、後宮のまとめ役である「宮主」になっている。 二人目の王貴妃は、太武帝が滅ぼした江月国の王孫女で、王族だけに気位が高い。廃皇后とは衝突が絶えず、太武帝からも避けられていた。しかし、朝廷にも江月国出身者が居て、勢力を伸ばしつつある。重臣の一人で従兄の王起は、皇后廃位を最初に唱えた人物である。 三番目の安妃は、琴の名手の娘で、彼女自身も琵琶の名手である。廃皇后の誕生日を祝う宴で演奏した際、太武帝に見初められて側室となった。 「おそらく、王貴妃や江月国勢力は、王女が皇后になるのを妨害してくるわ。彼女らにだけは隙を見せないように気をつけてね。」 翌日、景王子の立太子式が行われた。これにより、景王子は正式に丁国太子となり、明亮皇女は太子妃となった。
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