第三章 幻の結婚式

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琳琳王女が大殿に入ると、そこには真王と大允国からの二人の使者が待っていた。 「琳琳、ご苦労であった。報告は後で聞こう。それより、太武帝の使者がお前をお待ちだ。こちらへ座りなさい。」 琳琳が席に着くと、使者の一人が口を開いた。 「琳琳王女様のご帰国をお待ちしておりました。実は先日、皇太后陛下が病で倒れられ、一時は危篤に陥られたのです。しかし、皇帝陛下自らご看病された甲斐あって、現在は小康状態を保たれております。」 「まぁ、そのような事があったとは…」 「とはいえ、事態が事態ですので、皇帝陛下は結婚式の中止をご決断なさいました。しかし、真王陛下との約束も破るわけにはいきません。そこで、琳琳王女様には今後の事を二つの選択肢から選んで頂きたいのです。」 「それならば、まず私に話を通すのが筋ではないか?」 真王は怪訝な顔で抗議したが、使者は平然と続けた。 「皇帝陛下は琳琳王女様の意思を最優先されます。まず一つ目の選択肢ですが、琳琳王女様が皇后になられるためには、まず皇帝陛下の妻になる必要があります。妻になるには、結婚式で正室と認められるか、或は側室となるかです。従って、一旦側室として入宮され、皇后冊立を待つのが、皇后になられるための唯一の方法となります。」 「側室…ですか。では、もう一つの選択肢とは?」 「はい。もう一つの選択肢とは、この縁談を白紙に戻し、琳琳王女様にはもっと条件の良い嫁ぎ先を探してもらうというものです。皇帝陛下は琳琳王女様の幸せを第一に願っておられます。もちろん、こちらを選ばれた場合でも、皇帝陛下の在位中は貴陽国には攻め入らない事をお約束いたします。」 琳琳王女の意思は決まっていた。しかし、真王の表情は険しかった。 「この結婚には我が国の運命がかかっています。父王とも相談して決めたいので、少し時間を下さい。」 琳琳王女がそう言うと、使者達は大殿の外へ退出し、入れ代わり孫王妃と恭王子が入って来た。
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