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「父上、どうして私が太武帝に嫁がなければならないのですか?」
ここ貴陽国の都、陽都の王宮で、真王の娘である琳琳王女が父王に食い下がっていた。
「琳琳よ、この結婚には貴陽国の命運がかかっておるのだ。お前も一国の王女ならそれくらい覚悟していたはずだ。」
確かに、琳琳王女は幼い時から王女として国のために結婚することを当然の義務として教えられてきた。
「ですが、太武帝は周辺諸国を武力で制圧し、冷酷で残忍な皇帝と聞きます。そのような方の妻になるなんて、いくら国のためでも嫌です!」
琳琳王女の言うとおり、太武帝は武力で周辺諸国を従え、自らが治める大允国を即位後わずか十年で大国へと押し上げた。しかし、捕虜を生きたまま串刺しにしたとか、敵国の武将を殺して肉を食べたというような残虐な噂で知られていた。
「既に国境には十万の大允軍が配備されておる。わが国から毎年塩を献上することと、陽姫を嫁がせることを友好の証とすることで戦が避けられるのだ。」
貴陽国は小国ながら海に面しており、周辺国に塩を輸出することで財を得ていた。一方、大允国は内陸のため塩は輸入に頼るしかなかった。国境に兵を配備したのも、貴陽国を制圧して塩を手に入れるためだったのだ。
「事情はわかりました。でもなぜ私なのですか?陽姫なら私じゃなくてもほかにもいるじゃありませんか?」
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