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貴陽国の王権制度は少し変わっている。実は王家が三つあるのだ。
元々、王家は貴陽氏だったのだが、尊王の時代に三人の王子がそれぞれの母親の実家を後ろ盾に熾烈な後継者争いを繰り広げた。困り果てた尊王は三人の王子をそれぞれ分家させ、各家の当主が順番に王位につく「王位輪番制」を定めた。こうして常陽氏・華陽氏・楽陽氏という三つの王家が誕生した。
陽姫というのはその三つの王家に生まれた娘のことである。現在、王位についている真王は常陽氏であるが、華陽氏・楽陽氏の娘たちも陽姫と呼ばれている。
「実は、ただ結婚するだけではないのだ。陽姫を皇后にすることが我が国が出した条件だ。そして皇后の素質があるのは聡明なお前しかいない。」
いささか親馬鹿ではあるが、実際に琳琳王女は勉強好きで時には父王の公務も手伝うほどであり、その才媛ぶりは周囲にも認められていた。
「皇后って?!太武帝には既に陳皇后がいるじゃありませんか。」
「太武帝にはまだ世継ぎとなる皇子がいない。それに最近、陳皇后の父親が亡くなったらしい。皇子もなく後ろ盾を失った皇后などもはや大允国には必要なかろう。」
琳琳王女は父王のあまりにもしたたかな企みに絶句した。しかし同時に、これくらいしたたかでなければ一国の王など務まらないということも改めて感じた。
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