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その手紙は琳琳王女にとっては思いがけない事ばかりだった。皇后廃位の件は父王の狙いどおりだったが、陳氏を実家へ帰したのは、太武帝なりの気遣いであろう。王女が宮中で居心地の悪い思いをしないように配慮してくれたことがありがたかった。
それに、新しい皇后のために皇太后の宮殿を改装するのは、母親である皇太后よりも皇后を尊重するという意思表示ともとれる。少なくとも、皇后としての立場は保証してくれるということなのだろう。
しかし、琳琳王女にとって一番嬉しかったことは、十二年前に会ったことを覚えていてくれたことだった。『可憐な』という表現も王女をときめかせるのには十分だった。
「そんなふうに想われていたなんて思いもしなかった。すっかり誤解していたわ。早くお返事を書かなくては…」
琳琳王女は丸一日かけて返事を書き上げた。その手紙には、手紙への御礼、自分を気遣ってくれたことへの感謝、そして自分もまた十二年前に会った若き皇太子の姿が忘れられないことが綴られていた。
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