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ガチャッ
鍵を開けて中に入る。廊下には今朝と同じようにバケツとタオル、雑巾が並んでいる。
「うわー、本当にすごい事になってる!」
「でしょう?朝から大変だったんだから」
ふとバケツを覗き込む。
「あ、あれ?」
「どうしたの?あれ?水溜まってないね」
タオルと雑巾を触るが、やはり渇いている。
――――何故?
「ハハ、やっぱり寝ぼけてたんじゃないのー?」
「そんな事ないよ!」
「まぁ、心配事が消えて良かったじゃん!じゃ、私帰るね?」
「う、うん、ごめんね?わざわざ来てくれて」
「いいのよ、じゃあまた明日」
「またね」
バタン
玄関の扉が閉まると同時に静寂が訪れた。
また一人になった。
ポツリ
「…え?」
ポツリポツリ
雨漏りだ。天井を見上げると、鼻先にポツリと雫が落ちた。
妙に暖かい。
天井には雨漏りしている様子はない。まるで空中から落ちているようだった。
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