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辺りはすでに薄暗い。
茜色だった空は闇に呑まれ、煌めく星達が顔を出し始めた。
こうして1日中空を眺めていると、季節の移り変わりがわかる。
冬はもっと早く陽が沈んでいた。
今頃はもうオリオン座が見える時間だろう。
今日はとても良い天気だった。
昨日のどしゃ降りが嘘のよう。
水溜まりがちらほら見え、大きな水玉模様を思わせる。
そんな下界に私は舞い降りていた。
いつからだろう。
誰の家かもわからない屋根に腰掛け、ただ空を眺める。
とてもつまらない事、だけどなんだか不思議な気分。
このまま私が息絶えたら面白そう。
クスッ
思わず笑みがこぼれる。
死者を運ぶ私が死者になる、これより滑稽な事があるだろうか。
私は天使。
この世界で天に召される者を天界まで運ぶのがお仕事。
この世界の者は実に愚かだ、せっかく与えられた身体を自ら手放す者が多い。
何故?
疑問に思う。
毎日毎日、死者の手をとり導く。
日を重ねる度に疑問は膨らんでいく。
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