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「……まあ、予想通りの反応だね」
雨は一層強まった。こんこん、と斧の立てる音がやけに大きく聞こえる。
「だけど……少しは話を聞いてくれないかな? ロイン・ラーヴァント」
がたん、と、明らかに動揺したような音が中から響いた。
「何で……私の名前を」
「知りもしない女の子を呼びには来ないよ」
青年はドアにもたれかかった。
木製のドアを挟んで、二人は互いに気配を感じ合っていた。
「……僕の提案だ。君の力を、僕らに預けてくれ」
「……」
「君にとって忌むべき力だということは知っている。もちろんタダでとは言わない。代わりに……」
雨は一層強さを増す。
豪雨と呼べるレベルまで強まった雨の中、青年は平然と話を続けていた。
三週間後。
荒野を駆ける、馬車の姿があった。
馬車は黒毛の巨大な馬に引かれ、目的地を目指す。
その手綱を持つのは、妖艶な雰囲気を漂わせる女性。彼女はタバコをふかしながら、後ろの馬車から聞こえる話し声に聞き入っていた。
「……よし!! 多数決により、あなたの偽名は「ソウ」に決まりました!!」
甲高い少女の声が、非常に嬉しそうに宣言する。
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