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「ああ、いい名前だな。よし、偽名決定祝賀会やるか」
やや低めの青年の声。
「偽名決定祝賀会って何よ? あんたが酒を飲みたいだけでしょう!!」
「……あ、ああ……まあ平たく言えばな……」
「もう新人歓迎会もやったんだからね。家計もそんなに……ソウ、また唐辛子食べてんの?」
「好きなんだからいいじゃん」
抑揚の無い、それでいてはきはきとした声が言った。
「ソウは、その唐辛子のせいで妖怪扱いされてたんだよ? まったく……。鷹の爪とは迷惑な別名よね」
「別にいい」
「全員。……そろそろベレンに到着する。検問の準備をするんだ」
落ち着いた青年の声が場を取り仕切る。
「ソウの初仕事だ……頑張ってくれ。……あ、唐辛子のヘタを投げないでくれ……」
「もう、ソウ!! 新人は新人らしく緊張でもしなさいよね!!」
「やだ」
手綱を持つ女性は、タバコをふかし、艶っぽい笑みを浮かべた。
「……あの子もだいぶ溶け込んで来たわねぇ……。だけどこの稼業は大変よ?」
馬車は目的地に向かって走り続ける。
四人を乗せて――
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