1章

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「……あの、ソウさん。一つ訊いていいですか?」 ソウの隣で星を眺めていたロウが、ためらいがちに言う。ソウは目を向けることでそれに応えた。 「私を倒れる巨木から救ってくれた時や……エギを倒した時……ソウさん、明らかに……変でしたよね。あれ、何なんですか?」 「傷持ち」 ラルフが代わりに答える。 その口元には、皮肉な笑みが浮かんでいた。 「……君を信頼して、教えよう。君は移動国家アービアを知っているか?」 はい、と即答する。 「まあ、知らない方が少ないだろうけどね。……国と国を放浪し、あの兵器を復活させようとする……悪魔の国家」 「ラルフさん……?」 「ああすまない、話が逸れたね」 ラルフは静かな笑みを取り繕う。 「まあ、その国は純血嗜好でね。代々、体に傷を持った人間が生まれる。その傷ができる場所は人により違うが……まず出ない場所がある。顔だ。だが、極希に……生まれるんだよ」 「それがソウさん?」 「それ以外何があるの」 ソウは不機嫌に言い、唐辛子のヘタをロウの顔に投げつけた。だが、ラルフは気にしないことにする。
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