1章

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「まあ……その傷持ちは、魔法のような力が使えてね。肉体強化、外殻錬成、獣化……。この三つのいずれかが使える。だけどソウは卑怯なことに三つ全てを……ソウ、ヘタを投げないでくれ」 「一言多い」 「まあ……つまり、だ。ソウは強い。辛さへの耐性も人一倍強い」 ロウはソウの体をまじまじと眺めた。 壊れもののように白く、細い体を見ていると、強いとは信じられない。しかし、その強さを目の当たりにした以上信じざるを得ない。 「それ、ずっと使えるんですか?」 「いや。ここからが、厄介なとこなんだ」 ラルフはソウの顔色を確認して、続ける。 「傷持ちは……何かを代償にしないと力を得られない。普通の傷持ちは体力だけだが、顔の傷持ちは違う。もっと重い……永続的な代償だ。ソウの場合は「知識」」 「知識……?」 「そう……。知識の一部を削ることで、ソウは力を発揮出来る。ただ、その失った知識はもう二度と得られない」 こぼれ落ちそうな丸い目が、ソウの目とかち合った。 ソウは、いつものような半開きの眠そうな目だが、その奥にはほんのひとかけら、心配が混じっている気がした。
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