1章

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「……」 その様子を馬車の影から見ていたソウは、唐辛子を一気に二つも頬張っていた。 ぷくりと丸く膨れた頬を、ロータスがマニキュア付きの爪でつつく。 「羨ましいんでしょ」 「……別に」 「ふふっ……。可愛い理由で知識を集めてるくせに……」 「私本当にロータス嫌い」 ソウは不機嫌に唐辛子を噛み砕き、飲み下した。ぽうっと星々を見上げる。そこに――一人の女性の顔が浮かんだ。 「さて……とりあえず任務は完了ね」 ロータスはラルフに、一枚の用紙を渡す。用意した羽ペンで、ラルフはそれにすらすらとサインをした。 「……掴めてないか? アービアの動き」 「ええ。掴めない。まあ簡単に掴めないから……この稼業やってるんでしょ? あんたは」 ラルフは、いつもの皮肉な笑み。 「まあね。……出来れば、補強した国家に……奴らの兵器が撃ち込まれたくないものだけど」 「まあいいじゃない、今はそんな固い話は……。それに、母国を悪く言わないの」 「無理だね。……とりあえずお茶にしよう」 一仕事終えた補強屋達は、その後も三日間滞在し、去って行った。
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