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「ちょっとあなた……起きなさい!!」
司書は少女の耳元で叫んだ。
だが、少女はこの汚れ放題の本棚の上で、幸せそうに眠り続けている。
「ほら、起きなさい!! ここは図書館、宿屋じゃないのよ!?」
「ふむ……」
少女は寝言で返し、再び寝息を立て始めた。
昔に来た、泥酔した酔っ払い並に厄介な相手だ、と司書は覚悟を決める。
司書は酔っ払いを起こしたあの手段を使うことを決心する。
「ちょっと失礼……」
すうすうと息を立てる小さな鼻を司書はつまんで、息を封じた。
「ふが……」
案の定これには勝てず、少女はのろのろと目を開く。
とろんと眠そうな目は、髪と同じく鈍い灰色。
目を開けた少女は、より人形めいた雰囲気が増し、少女が動いていること自体に違和感を感じるほどだった。
「……おばさんメガネずれてる」
少女は、抑揚の無い声だが意外にもはっきりした声で言った。
「あなたの指摘のがよっぽどずれてるわよ!! 何をしてるのよあなたは!! 私は長くここに勤めてるけど、本棚の上で寝て出会い頭の人間にメガネのズレを指摘する人間は初めて見たわよ!!」
少女は極めて緩慢な動きで体を起こした。
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