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その人の雅な風姿は今も頭の内だと思っていたが、数年前の記憶などはまるで役に立たないものであったと思い知る。
「……こ、これは戸次殿も……御壮健のようで何より、と……」
「以前、石宗様の御屋敷でお会いした時よりも、更に背が伸びた様ですね。私などの背丈は、とうに追い越されてしまったのでしょうか?」
失礼だが、それはかなり昔の話じゃないだろう?
「何分、はしたなくも合戦に明け暮れた日々を送っておりましたので……つい、記憶の中の祥太殿はまだまだ幼いものとばかり」
「私も、道雪殿のご健在は久しく遠方よりの声望に頼りきりでありましたもので……師も、道雪殿は門下で突出した出来物であると、よく申しておりました」
「まぁ、石宗様がそのようなことを……生前にもう一度お会いして教えを請いたかったのですが……それも、叶わぬこととなってしまいましたね。ですが、所伝様はまだまだご健在のようで、喜ばしい限りです」
所伝とは、タラの事を指している。
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