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「やめてってば…その呼び名からようやく解放されたばかりなんだからさ」
「ふふ、すみません。では、タラ様と呼び改めさせて頂きます」
「うん」
生意気にも、タラは髭をぴんと張り立たせながら頷く。道雪殿は懐より取り出した扇を口元に当て、たおやかに笑った。
今対話しているこの方は戸次道雪(べっきどうせつ)様と言い、大友家中で随一の名声を誇る、大友家の武威の象徴とも言うべき人物だ。
道雪殿は両脚が動かぬ不具の身であるが、戦場では車椅子を手足の様に操り、文字通り戦場を駆け抜けていると聞く。
無論、将としての采配の巧みさも折り紙つきだ。道雪殿が率いる一軍が負け戦を喫したという報は、一度たりとて耳にしたことがない。
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