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道雪殿はその加判衆の筆頭だ。だから、緑や家格だけで考えた場合、俺と道雪殿に面識があるということは奇貨以外の何物でもない。
また、領地内の支城の城督に任命されるのも大体は同紋衆の者だ。それ以外の者は常に同紋衆らの一段下に甘んじなければならない。
そしてそれは、師の石宗殿も例外ではなかった。師の病没後、俺は急遽師との養子縁組をせよとの命を受け、その遺領を継ぐことになった。
取り敢えずは出世のように思えるが、そうでもないんだ。遺領と言っても寺社領であり、知行もごくごく僅かだ。
……師の遺業から考えると、これはあまりに淋しいという気がする。それにもうひとつ、この相続劇には淋しいことが重なった。
とある事情から、誰もこの領を引き取りたがらなかったのだ、その点、俺は偶然にも受け取り手となるにはうってつけの理由があった。
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