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「そうでした、宗麟様をお見かけになりませんでしたか?祥太殿に改めて謁見し、任命の言葉を掛けるようにとお伝えしたのですが……」
「あぁ、フランシス様でしたら天主堂の前でお会いしました。その折りに『お役目ご苦労さまです』という言葉だけは頂きました」
道雪殿から、深い深い溜め息が漏れた気がした。
「……いかなる公務と重なろうとも、礼拝はすべてに於いて優先されるということですか……すみません、宗麟様に代わりお詫び申し上げます」
膝の上に両手を合わせ、道雪殿が頭を下げる、丈長の前髪がはらりと舞い落ち、着物の上に小さな渦を作った。
「や、やめてください、道雪殿にそのようなことをしていただく謂れはありません!」
泡を食って取り繕うと、道雪殿は顔を上げ、さもおかしげに笑みながら脇髪を払う。
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