南蛮大名

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……そいつは、俺に物心の付いた時からすでにここ、府内の街にあった。 まず造りからして毛色が違う。木造りの武家屋敷が建ち並ぶ中にあって、石と漆喰の組み合わせによって成し遂げられた建物。 それも石垣のように石本来の形を生かしての組み上げではなく、石を加工して算木のような形に切り出し、それを積み上げて作られている。 これには海の向こうより持ち込まれた建築様式が生かされていると聞くが、府内に隣接する臼杵の石工の力も大きいのだと思う。 臼杵は岩と崖の町であり、石の性質を生かした建築術が発達している。崖を切り崩して掘り出された『臼杵石仏』という石仏群はその象徴と言えるだろう。 ……しかし、そんな見事な石仏を作り出してきた技術が時を越え、この『天主堂』とよばれる建物の完成に一役買うとは、誰が想像しただろうか。
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