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この天主堂という呼び名も、俺の生まれる前にはなかった言葉らしい。海向こうより内地にもたらされた『南蛮新教』の神を祀る建物なのだそうだ。
それにしても……まるで天を衝くかのようにすっと伸びた屋根造りに、額門があるべきところに大きく掲げられた十字架の風体は、いつだって人目を引く。
この十字架、神社でいう鳥居のようなものらしい。
「まぁ、要するに新種の神社だよね。祠、神社、お寺ときて次は天主堂。はにゃ……長生きはするものだよね」
「貴重な御高説をどうもありがとうございました。ついでにお前が音頭を取って新しい宗派を立ててみたらどうだ、知猫様よ?」
「やだよ、めんどくさい……はぁ、信仰のことになると、祥太は相変わらず可愛げなくなるよね。無理ないけどさ」
「どの神様も、兎に角俺を振り回してくれるからね」
この言葉を喋る世にも珍しいらしい猫、名前をタラという。人語を解し、そして先祖の記憶を代々蓄積するという生態から、俗に知猫と呼ばれる。
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