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「あら……そこに居るのは、フランではありませんか?」
「え……」
振り向いた先には、異国の召し物に身を包んだ金髪の貴人の姿があった。しかしその顔や姿をよく眺めることもなく、俺は道端に顔を出す雑草へと視線を落とす。
「これはこれは、大友宗麟様でしたか。城下町とは言え、珍しいところでお会いしますね」
「そんなことはありませんわ。私はこちらのチャペルには連日礼拝に来ていますし……また、こうして入口で出会ったのは主のお導きによるものでしょう。どうですか、フランも共に礼拝しませんか?」
「い、いえ……無礼ながら、その段はご勘弁を。戸次様への挨拶に向かわねばなりませんので」
「そうでしたか。お役目御苦労様です」
それは心よりの労いの言葉なのだろうが、俺には酷く他人行儀のように思われた。まるで、戦を外から眺める貴族の態度じゃないか。
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